「ロシアに旅行に行ったら戦場に送られた」ロシアで騙され、ウクライナとの戦いの最前線に送られたインド人の家族を取材しました。
■ロシア旅行のインド人がだまされ最前線の兵士に…
24年ぶりに北朝鮮を訪問するロシアのプーチン大統領。
到着前、平壌市内の道路沿いにはプーチン大統領の顔写真がずらっと並び、歓迎ムード一色となっていました。
19日、首脳会談が行われる見通しの両首脳。ロシアは北朝鮮から兵器を調達しているとされていて、軍事面などでの連携を一層深める見通しです。
ロシアによるウクライナ侵攻が始まって約2年4か月。武器だけでなく、深刻な兵士不足に直面するロシア軍は今、外国人兵士を大量に動員しているといいます。
「戦争に行きたくない。銃の扱い方さえ知らないのに、(ロシア軍は)我々を前線に立たせようとしている」
“強制的に戦地に送られる”と恐怖を訴えるのは、軍服を着たインド人の若者7人。
実は彼らは騙されて兵士となり、ウクライナの最前線で戦うことを強いられているのです。
一体どういうことなのか。
私たちは実態を探るため、インドのパンジャブ州に向かいました。
取材に応じてくれたのは、バルヴィンダルさん。動画の中で悲痛な表情を浮かべていた、ガガンディープ・シンさん(23)の父親です。
ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「息子はとても勤勉で教養のある子です。息子がいない生活がとても寂しい。早く会いたいです」
23歳のガガンディープさんは専門学校に通っていて、2023年12月、友人らと観光のためロシアに入国しました。
そして、現地の旅行業者と合流。車で観光名所を案内してもらう予定でしたが、連れて行かれたのは、隣国のベラルーシだったのです。
突然、旅行業者に置き去りにされた彼らは、ベラルーシ当局に不法入国だとして拘束され、ロシア側に身柄を引き渡されたといいます。
ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「刑務所に10年入るか、ロシア軍で1年働くかを選べと脅され、息子たちは恐怖を感じて、入隊の書類にサインしました」
入隊した後は軍事訓練を受けたといいますが、期間はわずか10日ほど。
ロシア軍は当初、「警備や負傷兵の介助をする安全な仕事だ」などと説明していましたが、送り込まれたのは、ウクライナ東部の最前線でした。
「一緒にキャンプにいた3人は銃弾で負傷し、我々にも命の危険が迫っています」
ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「息子が乗った車両の前後にいた戦車は(ドローンで)攻撃され爆発したと。戦場では彼の身に何が起きてもおかしくないし、とても怖い」
■ロシアが直面する深刻な兵士不足
ロシアが外国人を戦地に動員する背景には何があるのか。
東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠 准教授
「いまロシアとウクライナの戦争がかなり消耗戦になってきている。死者だけで5万人だとすると、死傷者数は20万人とか25万人規模。一見大きなロシア軍だが、意外と戦場に投入できる兵士が制約されていて、ロシア人じゃなくてもいい、もう数が集まればいいという姿勢なんだろう」
外国人の動員は、高収入をうたって募集をかけるケースが多いといいますが、小泉氏は、「無理やり外国人を戦地に送っている現状は、より厳しい戦況を表している」と分析します。
アジアやアフリカの途上国などからリクルートされたり、強制的に動員されたりした人は数万人規模に上るとの観測もあり、インド人は少なくとも4人、スリランカ人も16人が死亡していることがわかっています。
「一刻も早く、我々をここから助け出してください」
インド政府はロシアに対し、ガガンディープさんらの帰国を働きかけていますが、彼らは今も戦地に取り残されたままです。
ガガンディープさんの父親 バルヴィンダルさん
「妻は恐怖のあまり、精神的に不安定な状態になってしまいました。私はインドとロシアは良き友人だと思っていましたが、なぜこんなにひどいことをするのですか。戦争を早く終わらせて、息子を返してほしい」
父親は、来る日も来る日も最愛の息子との再会を祈り続けています。
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